昭和ファサードの猫

The cat in a façade.
Photo: “The cat in a façade” 2017 Tokyo, Apple iPhone 6S.

近所の、いまにも崩れそうな長屋に入った豆腐店。歩道を覆うように、軒が伸びていて、その上に夏は夕顔が咲き誇る。さしずめ、昭和のファサードと言ったところか。

「気がついたか」

屋根?っていうかファサードに居るのは初めて見ましたよ

「お前が気がついてなかっただけだよ」

大きくなりましたね。初めて見たときは子猫だった

「なに大人ぶってんだ。お前なんかより、よっぽど色々見てんだぞ」

すみません

「俺たちが見えないような生き方はろくなもんじゃないぞ」

ん?

「見えてるのに、見てないんだ」

そうか。。そんなもんかもしれません。今日は、会えて良かった。

「ああ、じゃあな」

どこから来た猫?

a cat in Malacca
Photo: "a cat in Malacca" 2010. Malacca, Malaysia, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA)

マラッカの猫は、どこからやってきたのだろう?この半島に、猫が昔から居たとは思えない。

マラッカは古くから海上交易の要衝だ。無数の船がここに投錨し、無数の人たちがここに滞在し、あるいは骨を埋めたことだろう。


今、僕のまえで長く伸びているこの猫も、その祖先は船乗りがねずみ取りのために、遙かヨーロッパから連れてきたのだろうか。あるいは、その古風な体型と顔立ちを見るに、エジプトあたりの猫発祥の地から、乗り込んできたものだろうか。

マラッカの猫の体は皆小さく、ほっそりしている。日本の海の近くの猫は、餌がよいからみな体格がよいが、ここの猫たちはそういうものでもないようだ。

飼われているのか、あるいは、そこに存在しているだけなのか、それもよく分からない。が、モスクの広場で超然と昼寝にいそしんでいる彼の目線は鋭い。


イスラムの猫だなぁ、と勝手に合点し、起こしてしまった事を詫びて立ち去る。彼の祖先は、イスラム教徒と共にダウ船に乗ってきたのかもしれない。