世界の中心で、愛を叫ぶ 突堤

Photo: 突堤 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX
Photo: "突堤" 2006. Kagawa, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EBX

世界の中心で、愛を叫ぶ 突堤。

波は低く、湾は開け、天気が良い。そうして、コンクリートの突堤が、長く伸びている。

散々迷って、やっとたどり着いた。ドラマのロケに使われただけあって、とても写真映えする。フレーミングすると、とても美しく収まるし、角度を変えると色々な表情を見せる。


今まで撮った突堤のなかでは、幅が小さくて、長いのが印象的。しかも、突堤なのに観光名所になっている。

まさに、キングオブ、突堤。

伊豆半島

Photo: 突堤 2006. Izu, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX
Photo: "突堤" 2006. Izu, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX

伊豆半島、朝。

前の夜に酷く飲んで、それでもまずまずの時間に目を覚まして、浜に出た。今日は天気があまり良くなくて、少し寒いぐらいだ。海も荒れていて、ロマンチックもなにも、吹き飛びそうな風が時折吹く。


ここの突堤は、テトラポットで組まれている。テトラポットは見た目よりも危なくて、もし足を滑らせてはまったりすると大変なことになるらしい。カタ チが複雑なので、下手をすると上がれなくなってしまうのだ。だから、突堤マニアではあるが、テトラポットの上には立たないようにしている。安全第一なの だ。


もう、サーファー達が海に出ている。途中で、一緒に泊まりに来ているメンバーとすれ違う。

「おはよう」

朝一から完璧に OL ファッションを纏っている。流石だ。

知多半島

Photo: 突堤 2002. Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fujifilm RHP III
Photo: "突堤" 2002. Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fujifilm RHP III

愛知。知多半島。

良い突堤と、そして、晩飯を求めて、僕たちは半島を南に向かっていた。ネットで調べた日の入りまであまり時間は無い。それでも、名古屋市街から良いペースで知多半島にたどり着いた。


どこがよい、という訳でもない。海沿いの国道を走り、それっぽい突堤が見えたら、空き地に車を停めて、撮りに行くのだ。

なだらかな湾に、ぽつんと観光ホテルが建っていて、その正面になかなか良い突堤を見つける。これは良い(なにが良いんだか)と、早速カメラを担いで突堤を走る。夕暮れの突堤は、波がどんどん荒くなって、冷たい空気が流れてくる。二度と来ることはない、一期一会な場所だ。

ホテルのベランダで夕涼みをしていたお客が、一体何をしているのかと興味深げにこちらを眺めている。


夕食は、あまり選択肢も無く、観光客相手の魚を扱う店で食べた。味は、覚えていない。

突堤の縁

Photo: 2001. Fukuoka, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/35, Fuji-Film RHP III, F.S.,
Photo: 2001. Fukuoka, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/35, Fuji-Film RHP III, F.S.,

突堤の縁に立って、打ち付ける波を見つめている。夕日が沈んだばかりの海面には、未だ暮れきらない明るさが残る。

恐い。薄暮の中、鉛色の液体が、ザブザブと蠢いている。冷たい手、致死のものがすぐ足許に横たわっている。

小さい頃、光の漏れるエスカレーターの隙間が恐かった、ホームから眺める線路にも、死の影があった。今、それらは恐くない。でも、コンクリートにばっさりと切り取られた海は、恐い。


ここには一人で歩いてきた。思うに、突堤は一人で来た方が良い。吹く風は、やがて全てを離ればなれにしてしまうから。

突堤マニア

Photo: 突堤 2001. Yakushima, Japan, Nikon F100, AF ZOOM NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5D,, Fuji-Film RHP III
Photo: "突堤" 2001. Yakushima, Japan, Nikon F100, AF ZOOM NIKKOR 35-105mm F3.5-4.5D,, Fuji-Film RHP III

突堤、道の終わり。

屋久島で、昼メシを食べようと立ち寄った浜。観光シーズンはとうに終わって、店はひっそりと静まり、人影は見えない。遠くで、護岸工事をする重機が唸りを上げていた。景色は霞んだ薄い光に包まれ、空は低く、空気は潮でねばねばしている。

両側は、砂浜だ。この消波ブロックが無ければ、砂はじきに失われてしまうだろう。砂浜は、この醜い腕に抱かれて、どうにか生き延びている。

この浜に、ウミガメは卵を産みに来るという。何故こんなところに、長く旅をしてまでやって来るのか。茫洋とした黒い海を眺めながら、僕は突然、心が寒いと思った。


僕が撮る写真には、これといったテーマも思想もないけれど、突堤を撮ることは多い。その有無を言わせない隔絶が、僕を引き寄せるのかもしれない。

しかし、突堤は、行き止まりではない。僕は振り返って、再び歩き始めた。


注:とっ‐てい【突堤】 陸岸から海中または河中に長く突き出た堤防状の構築物。港・湾では防波堤とし、河口では水深を維持するための防砂堤とし、海岸では人工的に砂浜を作るために用いられる。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]