九十分、ランチブレイクを取られても、正直困る。

Mud wall
Photo: “Mud wall” 2013. Katsura-Rikyu, Kyoto, Richo GR.

芝公園。近くのホテルで、技術系のお集まり。それでは昼休みということで、いきなり九十分、ランチブレイクを取られる。一体何をしろと。

昼メシは、適当に食べログで見つけた海鮮丼。すぐに食い終わってしまった。幸い、昨日までで夏のさかりはおしまいになって、今朝は運動会の朝みたいな風が吹いていたっけ。

東京タワーを眺めながら、公園のベンチに座る。頭上の桜の葉はだいぶ落ちて来ている。ツクツクボウシと、アブラゼミと、そしてあらゆる種類の蝉が、ひと時に圧縮された季節に鳴いている。


昼間の東京タワーをまじまじとみると、ずいぶん、いかつい。地上波の送信は止めてなお、今もたくさんのアンテナが取り付けられ、制御用機器用のコンテナやら、足場やらがついている。古くても、徹底的に改造して使う、そういう日本のやり方は嫌いじゃない。

公園のベンチに座るのは、OLとサラリーマン。全員がスマホをいじっているよ。

池があるから、けっこうな蚊が飛んでいる。夏じゅうまくっていた袖を長くして、それでもそんなに暑くはなかった。熊笹が青く茂っている。夏の桂離宮で見た。

松濤で、ハンバーガーを食べて、タイポグラフィーに遭遇する

uglydoll
Photo: "uglydoll" 2011. Tokyo, Apple iPhone 3GS, F2.8/37.

人間ドックの検査結果待ちで、一時間以上時間が空いた。松濤の方に向かって歩いて見る。

DINERと書かれた看板を見て、店に入ってみる。きちんと掃除と修復をすれば、それなりにお洒落なカフェで通用しそう、でも、明るい昼間の光ではアラが目立つ、ダイナー。そのちょっと安っぽくて、ずさんな感じが、きっと渋谷っぽくて、自分が年をとったからそういう事が気になるだけなんだと、考え直す。

注文はクラシックハンバーガー。カラオケボックスで出てきそうな、編み編みのポテトフライがたまらなく残念だが、ハンバーガーは結構まとも。小指をハンバーガーのおしりに掛けながら食べると、具がずれない。なんかテレビで見た気がするので試してみる。確かに。


そのまま少し歩いて、松濤美術館まで行く。芹沢銈介展。型絵染の展示。自分は染織に興味は無いと思って居たが、屏風や暖簾に織り込まれた文様は、新しい日本語のタイポグラフィー。存外楽しい。いろはがるたを題材にした屏風絵。難しくない、民芸と芸術の間のような作品。年季の入った居酒屋の、手水場にでもかかっていたらしっくり来そう、と言ったら失礼だろうか。

時間が来て、病院に向かって歩く。開店前のショップ、ブラインドの隙間からジッとこっちを見てる赤いヤツが居るぞ。

氷川丸

Photo: 2001, 氷川丸, Contax T2, Fuji-Film.
Photo: 2001, 氷川丸, Contax T2, Fuji-Film.

山下公園に浮かぶ氷川丸。そういえば、一度も乗ってみたことが無い。
学生時代を横浜に過ごしたから、この船のある景色が、僕の記憶の中に沢山残っている。

もともと、旅客船として建造され、戦争中は病院船に、戦後は引き揚げ船として活躍した。戦争中は機雷を三回受け、それでも沈まなかった、強運の船。同時期に建造された姉妹船の中で、戦後まで沈まなかったただ一隻の船なのだそうだ。

一度も中に入った記憶はなくて、なんていうか眺めているのが良いのだ。山下公園に行ったことはあっても、氷川丸に入ったことはない。そういう人って、多いのではないかと思う。