黒マヤー

Photo: “Mayaa (Okinawa cat).”
Photo: “Mayaa (Okinawa cat).” 2019. Okinawa, Japan, Apple iPhone XS max.

街からほど近い海辺の公園に、猫だまりを見つけた。

暫くじっとしていると、沢山寄ってきたよ。全部野良だと思うが、思ったより距離感は近い。僕を取り巻いて、お尻に頭突きをしてきたりする。南国とはいえ冬は冬で、ここのネコたちは少しモフッとしている。

「こんにちは」

どこからか、4歳ぐらいの男の子がやってきて、僕に挨拶をする。ネコたちはビックリして、取り巻きは解散してしまう。腰を上げて、立ち去ろうとすると1匹だけ付いてくる黒猫が居た。見送ってくれるのか?

この冬一番の冷え込みという沖縄の空は、まるで初春5月のような色だった。
(写真をよく見ると、もう1匹見送りが居るね)

ガンジー行くの?

Photo: “Hindustan Ambassador.”
Photo: “Hindustan Ambassador.” 2013. New Delhi, India, Richo GR.

「ん?ガンジー行くの?日本人はホントにガンジー好きだよね。何でか知らないけど。」

インド人の運転手は “マハトマ” ガンジーの名前に全く感銘を受けた様子は無く、むしろ少々呆れたように車を走らせた。


同行の友人が、インダス悠久のバクテリアにより病床に伏し、僕の旅は一人旅となった。それだけに、あまり遠出する気にもならず、デリー市内にあるガンジー由来の観光地にでも行ってみようかと思ったのだ。そして、タクシーで行き先を告げて最初に理解したのは、現代のインドではあんまりガンジーって、人気があるわけではない、と言うことだった。

デリー市内を走っているタクシーの多くが、ヒンドスタンモーターズのアンバサダーという車種。オリジナルの発売は1950年代だから、その古式蒼然とした外見はなかなか魅力的で、一回は乗ってみたいと思っていた。で、実際に乗って見ると、実に乗り心地が良い。インドの日差しをよけて、車の中に入ると、冷房があるわけでは無いけれど少しひんやりして、シックな内装の古い応接間に通されたような気分。

まさに鉄の塊といったドッシリした乗り心地と、ソファーのような柔らかいシート。まあ、衝突安全性能とかそういう事を言ったら、とても乗れないがそもそもそんなに速度も出ないんだと思う。この車、雰囲気いいねぇ、と声をかけると、運転手はとても嬉しそうに、ヒンドスタンの素晴らしさを話し始める。

何と言っても、最近のヤワな車と違って、滅多なことでは壊れないし長く乗れる、確かそんな事を言っていた。よく手入れがされた車内を見ても、彼がこの車を手塩にかけて維持してきた事がよく分かる。もう5年も前の話だが、ヒンドスタンと運転手は今もデリーの街を走っているだろうか。

見せてもらおうか、食べログ1位の実力とやらを

Photo: “Sushi chef on Tabelog #1.”
Photo: “#1 Sushi chef on Tabelog.” 2018. Hokkaido, Japan, Apple iPhone 6S.

と言うことで、2時間あまり電話をかけ続けて予約してもらった、北海道 食べログ第1位の鮨屋に、万札を握りしめて訪れた。席数は僅かに7席。おきまりが1種類のみ。飲み物はアラカルトと、メニューに合わせてお酒を出してもらえる方式が有る。一緒に行ったのが、飲む人間なのでお酒は店にお任せして出してもらう方式にした。絶対その方が安くなる確信。

我々以外は、年輩の夫婦、同伴ぽい紳士とお姉ちゃん、そして今回初一人旅なんですよと意味の分からないアピールをするITベンチャー社長(こういう人は訊きもしないのに、素性を明かす)


感想。とても、とても感心した。どの品も考え抜かれている、なんとなく出されるものが一品として無い。魚は二部制の提供時間に合わせて仕込まれ、食べる瞬間に最も良いコンディションになるように仕上がっている。高いネタを出して凄いでしょう、では無い。例えば、抱いた卵が半熟になるように火を通し、これをソースとして食べさせる蝦蛄。その処理は、卵を身につけたままで、背に一筋入れた包丁目から、トロッとした橙色の卵が覗く。鮨に限らず、卵をそんな風に扱った料理を、僕は一度として食べたことが無い。既存の調理法に縛られない、ゼロから考える料理の凄み。鮮度が落ちた蝦蛄では作れないから仕入れは時間単位での勝負だと言っていた。

店主は鮨屋の大将、という雰囲気では無い。洗練された風貌もあるが、所作から語り口から、よく考えてる、よく出来る、という感じが凄く伝わってくる。提供している各々の品物について、質問すれば幾らでもロジックをもって返してくる、それ程に考え抜いて、試している。かといって、気難しくも無く、客あしらいは巧い。ともすれば、無粋なマウンティングに走ってしまう一見の客も上手くいなして、まさに飲食店の鏡。


もう一つ。板場には、年輩の職人がアシスタントとして付いている。丁寧に下ごしらえのサポートをして、店主の仕事を実によく助けている。これだけの才能のある若者につくのは、どんな心境なのか。なんて、と思っていたら、実は先代に当たる店主のお父さんだそう。父親の代の時は、普通の街場の鮨屋だった店を、ここまでの有名店にした息子の才能と努力。親子との呼吸の合い方。父親の店の譲り方の鮮やかさに、また別の意味で感嘆した。

※料理に合わせる方を選ぶと、お酒はなんと一貫ごとに違うものを出してくれる。値段は時価になるが、内容を考えると納得がいく。