中庭

Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa
Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa

中庭。

「佐賀町エキジビット・スペース」の正面入り口、受付カウンターを「くぐって」ベランダに出ると、この中庭を一望することが出来る。

中庭、という空間は不思議な場所であって、そこには閉じた時間のようなものが、流れている。かつて、日本中から米が集められ、仲買人達がこの庭で商品を吟味した。目利きのためには、太陽の光が必要だったのだ。そして、それも今は昔。


窓枠にも、あるいは、中庭を囲む回廊の柱にも、優美なアーチが用いられている。建設当時は、もしかしたら、ちょっとお洒落すぎる建物だったかもしれ ない。それでも、70年以上の時を経て、建物は成熟した。ボロくなった、というのとは少し違う。手入れをされながら、ゆっくり年老いた建物。そして、そこ には生活する人たちの匂いがしっかりと染みついている。

そんな感じ。


注:本来、ベランダに出てウロウロしてはいけないようだ。ガードマンのおじさんに見つかると、かなり怒られる。

食糧ビルの入り口は美しい

Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa, Text 2001.4.15
Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa, Text 2001.4.15

食糧ビルの入り口は美しい。

アーチ型の梁が生み出す、柔らかい影と、歴史に裏打ちされた存在感。

この近代洋風建築は、もともと米穀の取引のために建てられた。1927年のことだ。高い天井、美しいアーチ、そして建物を特徴づける、広い中庭。かつては、この中庭に商品の米を並べて、取引をした。


このビルの三階に居を構えるオルタナティブ・スペース。「佐賀町エキジッビト・スペース」が、17年の歴史に幕を閉じようとしていた。20世紀があと 2日で終わろうとする 2000年12月30日、この場所は今日を限りに終幕を迎えようとしていた。

世紀の終わり、ふとしたきっかけで、その場所に行ってみたくなった。普通の生活。その中で 20世紀の最後は、なんの感慨も区切りもなく過ぎてしまいそうであり、それならばむしろ、なんの馴染みもないとはいえ、一つの「場」の終焉でも見に行った方がリアルなんじゃないか。

そんな気分だったのだ。


注:オルタナティブ・スペースって何?と言われるとちょっと分からないのだが、モダンアートとか展示しておくところで、かつ、美術館とかではない、ぐらいの意味だろうか。違ってたらゴメンなさい。

食糧ビル

Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa
Photo: 2000. Sagacho, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Agfa

冬、12月。

江東区、佐賀町。

食糧ビル。

水天宮前で地下鉄を降りる。箱崎の IBM を横目に見ながら、隅田川を目指して歩く。どんよりした曇空を映す川を渡り暫く歩くと、この古めかしい建物、食糧ビルが現れる。


その日、ファインダーを通して覗く世界は薄暗く、風は冷たかった。寒さと疲れで体は痛み、感情は後退し、理性だけがクリアに動いていた。そんな気分で撮った写真をこれから何枚か、紹介していきたいと思う。

シリーズ、江東区佐賀町、はじまりはじまり。