野犬と、チャオプラヤ川と。

Chao Phraya
Photo: “Chao Phraya” 2012. Bangkok, Tahi, Apple iPhone 4S, F2.4/35

アジア、と一言でいっても、やっぱり国によって全然違うんだな、っていうことに改めて気付きはじめている。でも、おおよそ中国系の人々はどこにでも居て、彼らの醸し出す雰囲気とか、匂いとか、そういうものは、国に関係なく普遍的で、強かにいろんな土地に蔓延っている。あ、ここにも中国があるなと、いろんな国のいろんな場所で感じる事が多かった。


でも、ここには、そういう空気は無い。歴史的な背景とか、人種の比率とか、そういう事があるんだろうと思うのだが、ここにはそういう事が無い。タイ、バンコク。ここには、ここだけの空気が満ちている。

朝、ホテルのカーテンを開けると、翡翠色に光るチャオプラヤ川が目に飛び込んでくる。イメージしていた、泥色の川では無い。空と緑を溶かし込んだ、翡翠の色だ。眺めると、高層ホテルの分厚い窓ガラスを通して、外の熱気が額に伝わってくる。渡しの小舟が川を横切って、水上タクシーの長い航跡と交差する。対岸の空き地には、さっきから1匹の「野犬」とおぼしき影が、ひょこひょこと行ったり来たりしている。

ある時、泊まったホテルの窓からの景色を必ず撮る事にしよう、と思った。それで、実践している。色んな窓を見た。熱気も、色も、匂いも、みんな違っていた。


昨夜、空港からホテルへの道すがらさっそくタクシーの横をうろつく噂の「野犬」に、やや恐怖を感じた。恐水病を持っている、と思った方が良いのだろう。間違っても、撫でたくなるような外見はしていないのだが、それにしても、これはちょっと困る。

最近、出国してから必ず、イミグレーションの右手にある検疫コーナーで、行き先の国のパンフレットを貰う事にしている。少し前に、屋台の飯に本気で当たってしまった同僚を目の当たりにして以来、この手の情報はバカに出来ないと思っている。恐水病は、確か、注意事項に書いてあったっけ。

今日は、とても暑い通りを歩く事になりそうだ。「野犬」には、出くわしたくない。

なんて長い

durian shop
Photo: “durian shop” 2012. KL, Malaysia, Apple iPhone 4S

長い。映画も限界。

ヱビスビールと肉じゃがが出てきて、まだ救われる。

長い。


家でゴロンとして、テレビでも見ていると、週末の午後はあっという間にくれて、夕方だというのに、飛行機に乗ってじっと座っているのは、なんて長いんだ。同じ速度で時間が流れない。

ちっとも過ぎていかない7時間を耐えると、別の国に立っている。

夜の街に、ドリアン売りが居る国だ。

「魚片湯」が超一流にまずい

Sliced fish soup
Photo: "Sliced fish soup" 2011. Singapore, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

旅先の醍醐味は、驚くほど不味いものに出会うことである。

フードコートのチキンライスの旨さに気をよくした僕は、ひときは人が並んでいる魚ソバの店を目指した。「魚片湯」と書いてあるので、きっとそんな感じの食べものなんだろう。12時をまわって、近所の会社員達が、昼食を求めて長い行列を作りはじめている。


OLの後ろについて、店の中を覗きながら待つ。並んでいるのは見事に中国系ばかり。周りの会話は、完全に北京語で、まったく分からないし、店の人も北京語で応対だ。(シンガポールは英語も公用語だが、北京語も公用語だ)並んでいる人達のわくわく感、みたいなものが伝わってくる。きっと美味しいんだね、この店は。

僕の前に並んでいたオバチャンは、何人前もの持ち帰りを頼んでいる。簡単なタッパのような容器に並々とソバが入れられる。味付け?の唐辛子醤油のようなものも付いてくる。で、それがちょっと漏れているあたりが、アジア的。僕の前のOLは、一人が常連で、一人が初めて連れてこられたといった感じだ。セルフサービスのやり方に、いささか戸惑っている。


店の中では、会計係のオジサンと、調理係が2人。一人は、白濁したスープを中華鍋に煮立てて、手際よくソバを茹で仕上げる。もう一人は、ひたすら魚のフライを作って積み上げる。ひたすら、ひたすら積み上げる。ビールにも合いそうだ。どう考えても、美味いねこれは。

僕の番になって、もちろん北京語は分からないので、身振りでメニューを選ぶ。ぶっきらぼうに見えるオジサンは、結構親切だった。


たっぷりのスープに、米粉のソバ、魚のフライ、青梗菜。さて、食べてみよう。

まずはスープを。。マズッ!なんか、凄く嫌いな味がする。フライは、、なんか苦い。
致命的に合わない、劣化した脂の気配と、なんかいけない感じのする出汁。これは、まずい。中華圏の下町で出会う、机の脚みたいな例の味だ。全然、口に合わない。なんで人気なのか、まったく分からない。

いや、醍醐味だわ。