休憩中

We'll be right back.
Photo: “We’ll be right back.” 2015. Las Vegas, U.S., Richo GR.

海外に出たら、周りは全部泥棒だと思って、荷物から絶対目を離すな。と教わった気がする。

でも、道ばたにガッツリ抜け殻が置いてありますけど。見回しても持ち主居ないし。
現地の人から見ると、これは盗まれない類のものなのか?


ラスベガスのメイン通り、ラスベガス・ストリップ。休憩中なのは本体の方か、あるいは抜け殻の方か。

プレゼンテーション

From the windowsill in Las Vegas
Photo: “From the windowsill in Las Vegas” 2015. Las Vegas, U.S., Apple iPhone 5S.

真っ昼間に一人部屋に戻って、夕方からのプレゼンの準備をしている。だだっぴろいスイートルームには、僕のリュックと小さなスーツケースが所在なく置いてある。無意味にでかいライティングデスクに PC を置いて、きっちり詰めた Power Point のファイルを再生する。

ホテルの中庭に面した大きな窓からは、プールが見えている。泳いでいる人は少なくて、たいていはのんびり日光浴をしている。多分、中庭には一度も行かずに終わるだろう。冷房で冷え切った室内に、分厚いガラスを通して僅かに砂漠の太陽の熱気が伝わってくる。


いつもはやらないが、今日ばかりは声に出して、実際に話してみる。僕は昔から、スクリプトを作る、ということはしない。その代わり、スライド毎に話すトピックが即イメージされるまで、各ページをしつこく眺める。

誰も座っていないソファーを観客にして、2回流す。時間はぴったりだ。あとは本番でどれだけ、余計なことを言わず、流れをシンプルに維持できるか。テンションを落とさないで、最後まで行けるか。

ステージに立ったときに、この準備の時間が自分を裏切らないことは分かっている。できることはやったのだから、のんびり本番を待てばいい。それでも、今日ばかりは時間がなかなか過ぎない。

砂漠の中のサターンロケット

Saturn V S-IVB
Photo: “Saturn V S-IVB” 2011. TX, U.S., Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

サターンロケット。月に人類を運んだロケット。

開発者チームを率いたのは、あのV2ロケットを作ったウェルナー・フォン・ブラウン。

計画は道半ばで中止され、打ち上げられることのなかった機体が、NASAの巨大な倉庫に展示されている。まったく馬鹿馬鹿しい大きさ。背伸びして、その切り離し部分を覗きこむことができた。


中身は、メカメカしい。ボードコンピュータと、見たことのない規格のレセプタ。職人技の無数の配線。当時の技術の粋が結集されたのだな、と一目で分かる。この配線の塊が、人間を月まで運んだのか。

打ち捨てられたメカは、厚い埃をかぶっている。年月に凝り固まり、ラバーは劣化している。だが、もし電気を入れたら、眠りから覚めて動き出すかもしれない。そんなリアリティーが漂っていた。


国家の威信をかけたプロジェクトの成果は、今は砂漠の中の倉庫で眠っている。地上で飢える人を尻目に、ロケットを打ち上げる愚かさを、あるいは思うかもしれない。だが、埃をかぶって目前にあるこの機械には、この国が世界の覇権に向けて突き進んだ時代の空気が、まだ残っているように思えた。


本当は打ち上げられて、大気圏で燃え尽きる運命だった機械だ。

予算は確保されず、計画は道半ばでキャンセルされ、ロケットはここに有る。